元作詞屋のラボ

いろんなエンタメを、「創る」エッセンスの視点から。

狭い。

作詞屋を長くやってたお陰で、聴く曲の好みというか聴き方というか、多少"創る人"寄りになってしまっている。

例えば、こんなの。

 

https://sp.uta-net.com/song/9359/

どうしようもない僕に天使が降りてきた

: 槇原敬之

 

 

この曲の感想...「狭い」

 

 

舞台が狭い。

この曲で主人公達の移動範囲は、

 

自宅→近くの空地。以上。

 

旅もしなければ海も眺めない。

電車で二駅すら移動しない。

 

時間軸が狭い。

この曲、ざっくり言えば、

"ケンカして出て行っちゃった恋人を近所の空地に迎えに行きました"という話。

時間にして、多分小一時間程度。

...何もかもが、狭い。

 

 

僕はこれを聴いて思う。

「すごい...さすが」

尊敬の念を抱く一曲。

 

 

詞は、「広く」やろうとすると大概ハマる。

例えば、テーマが夏だった場合。

朝の空気も、昼の太陽も、夜空も、それぞれ魅力的だし、

海、花火、夏休み...イベントも沢山ある。

恋愛も、友情も、懐かしさも、大抵のものは似合ってしまうだろう。

 

でも、

それを片っ端から埋め込んでしまったら、

作品は崩壊する。

何について言いたいのか?

聴く人に伝わらないし、書いている自分もゴールが見えなくなってしまう。

(自分がよくそうなっていた)

 

出来るだけ狭く、深く。

その意味でこの曲は究極だと思っている。